子どもが給食を苦手な原因として、よく聞くのが「牛乳が飲めない」という声です。確かに、主食がご飯で、おかずが和食のときにも牛乳が出てくると、給食が苦手でなくても「献立の組み合わせが悪いのでは?」と思ってしまいます。

 そもそも、どうして、給食には牛乳が付きもので飲むことが推奨されているのでしょうか。牛乳が飲めない子どもにどのように対応すればよいのでしょうか。子どもの小食や偏食に悩む保護者の相談にのったり、園や学校向けに給食指導の研修を行ったりしている筆者が解説します。

「牛乳を必ず出す」決まりはない

「ご飯のときでも牛乳というのは、組み合わせとしてどうなのだろう。そこまでして、牛乳が必要なのか?」と思ったことがある人は多いのではないでしょうか。筆者も子どもの頃に思っていたことです。

 たまに、栄養学の専門家が「給食には牛乳を出さなければいけないことが法律で決まっている」などと認識している場合がありますが、これは正確ではありません。確かに、学校給食法施行規則1条2項によると「完全給食とは、給食内容がパン、または米飯(これらに準ずる小麦粉食品、米加工食品その他の食品を含む)、ミルクおよびおかずである給食をいう」という記載があります。また、他の項を見ると「補食給食」や「ミルク給食」にも牛乳が含まれているということになります。

 しかし、これはあくまで、「給食」の定義であり、「牛乳をどのようなときも必ず出さなければいけない、飲まなければいけない」という決まりがあるわけではないのです。

 一方で、推奨されている給食での栄養摂取量から考えると、限られた予算で、特にカルシウムを満たすためには牛乳はとても優れている食材だといえます。もちろん、ホウレンソウや魚、海藻類などを食材として使えば、栄養素を満たすことができます。しかし、少ない予算から、毎日の献立を考えなければいけない側面から考えると、現実的に牛乳が一番の選択肢となるわけです。

 裏を返せば、栄養的には、仮に給食で牛乳が飲めなくても、家庭で別の食材から栄養が補えるのであれば、特に問題ないはずです。

訴訟に発展するケース

 牛乳が給食に必ず必要ではないとはいえ、現実問題として、ほとんどの給食では牛乳が出されています。そして、「牛乳を飲むことができない」「牛乳が苦手で飲みたくない」と訴える子どもも、相談を受けていると多いのです。

 2018年6月、静岡県長泉町で、当時小学6年の少年が担任から、給食の牛乳を残さず飲むように強制され、心的外傷後ストレス障害PTSD)を発症したとして、少年と家族が町を相手取り、250万円の慰謝料を求める訴えを起こしました。あくまで報道から読み取れる情報ですが、少年は学校に対して事前に、牛乳が飲めない体質であることを伝えていたにもかかわらず、3カ月以上、毎日のように担任から、牛乳を飲むよう強要されていたそうです

 このケースのように、牛乳が飲めない・苦手だという子どもに対して、一番やってはいけないのは「好き嫌いしないで牛乳を飲みなさい!」という根性論で牛乳を無理に飲ませることです。特に牛乳は他の食品と異なり、アレルギーはもちろん、「飲むことで気持ち悪くなってしまう」「飲むと体調を崩しやすくなる」など、子どもの健康に影響する場合もあります。

 無理やり飲ませるのはよくないと頭では分かっていても、子どもが牛乳を飲めないことに不安になり、つい、無理に飲ませようとしてしまう親も多いようです。子どもに無理をさせる必要はありません。周りの大人が改めて、そのことを理解するように努めましょう。

好きなものから牛乳に近づける

 ただ、「子どもに強制するつもりはないけど、もし、無理なく牛乳を飲めるようになる方法があればいいのに…」と思う親御さんもいるでしょう。どのようにすれば、牛乳が飲めない・苦手な子どもが、飲めるようになるのでしょうか。まず、牛乳に限らず、食を広げるために大切な考え方に「好きなものから受け入れられる感覚を広げていく」というものがあります。

 例えば、牛乳が飲めない場合、ミルクティー飲むヨーグルトココアなど牛乳が含まれている乳製品がキーアイテムとなることがあります。つまり、ポイントは苦手なものを苦手なまま挑戦させず、牛乳が飲めない・苦手な子どもが好きなものから徐々に、100%の牛乳に近づけていくことです。

 実際に以前、特別支援学校の先生の相談にのった際にも、牛乳が飲めない子どもがいました。その子どもの場合は「カルピスが好き」ということで、カルピスを牛乳と半々で割ると飲めるということでした。そこで、少しずつ、牛乳に対してカルピスの量を減らしていきました。具体的には、牛乳の割合を全体に対して1カ月ごとに5%ほど増やしていったのです。

 また、これまではカルピスと混ぜるときに牛乳パックからコップに注ぐ様子を隠していましたが、あえて、その様子を子どもに見せてから飲んでもらうことを実践しました。あえて見せる方が効果的なのです。隠したり、だましたりしていると、それがばれてしまったとき、さらに食わず嫌いが広がり、これまで食べているものすら手を付けなくなることがあるからです。

 そのように少しずつ、好きな感覚から広げていくことで、ついに半年後、100%の牛乳に自分から口をつけて飲めるようになりました。

 牛乳に限らず、一つの食材を食べられるようになったり、飲めるようになったりするには、半年から数年かかることもあります。また、ほんの小さなきっかけから、食が広がることもありますが、その際には「楽しく食べているときだった」ということが多いのです。親など周囲の大人には、無理はさせず、「食べることは楽しいこと」ということを共有しながら、少しずつ、子どもたちを支えてあげてほしいと思います。

月刊給食指導研修資料(きゅうけん)編集長 山口健

給食に牛乳は不可欠?


(出典 news.nicovideo.jp)

なかなか難しいですね。

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